読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

障害年金の請求を応援する社会保険労務士のブログ

障害年金の仕事が大好きな東京都町田市の社会保険労務士が、誤解だらけの障害年金のことを暑苦しく語ります。

社労士が報酬を得て障害年金の請求を代理することについて

障害年金(全般)

f:id:yotsuba-support:20150516151109j:plain

問題になっている障害基礎年金の認定の地域差について、厚生労働省で開かれている専門家検討会の第1回と第3回を傍聴してきました。ちなみに第2回と第4回(5月22日開催)は非公開ということで傍聴できません。残念です。

www.mhlw.go.jp

第3回は関係団体からのヒアリングのほか、「等級判定のガイドラインの考え方」の案が厚労省から示されました。

このあたりを書き出すと、どんどん長くなってたぶん更新できなくなるので、もう少し整理してから書くとして、今回はタイトルの話です。

社労士の援助は無償であるべきなのか?

関係団体からの意見の中で、「特定の職種が支援しなくても、当事者・家族だけで申請・受領できるようにするべきである」「年金が全額申請者に渡るようにするべきである」*1というものがありました(上記、厚労省のリンクから、資料1の「関係団体からの意見」をダウンロードすることでご覧いただけます)。

また、資料にはありませんが、同団体理事(医師)より、「社労士が支援するのはいいが、年金が他の人のところにいくのはどうなのか」「本来、申請しても通らない方が、社労士に『こういうふうに書いてもらえば通るよ』と教えられてくることがある。良心的な精神科医は断るが、そうじゃない医師もいる」という意見も出ています。ほか、上記ガイドラインの考え方に対する議論の中でも、社労士はどちらかといえば批判的なニュアンスで語られていました。

たしかに、「こう書いてもらえば通る」というテクニックのような方法や、診断書に事実と異なる記載を求めるよう本人に示唆するなどというのは論外です。一部には、診断書の日常生活能力の評価などで「ここに丸をつけて下さい」と医師に言うような社労士がいてトラブルになっているという話も聞いており、それは同業である私たちにとっても大きな問題です。

社労士が障害年金請求代理を業務とし、報酬を得ることについては、これまでも何度となく批判されてきましたし、この手の批判は「今に始まったことではない」のですが、それでも今回、このようなフォーマルな場で、こういった意見が出たことは、やはりとても残念です。

請求手続きの煩雑さと適正な認定を得る難しさが知られていない

障害年金の請求を業務として代理し報酬をいただくこと。そこに対する批判。

このことを考えるとき、いつもとても複雑な気持ちになります。障害年金も多くの手続きと同様、本人やその家族など当事者が自分で請求できます。もちろん社労士報酬などかからない方がいいに決まっています。

ただ、現実問題として、障害年金は本当に難しいです。自力では請求までたどりつかない場合もあるし、ようやく請求できても不支給という結果が待っていたり、実際の障害状態より軽い等級認定がされてしまったりして、しかもそれらの決定や認定が妥当なのかどうかすら当事者にはわからないまま、行政処分として確定してしまう。

あるいは、事後重症請求や、遡及請求で時効が絡む場合などで、社労士に依頼する場合に比べて請求までに非常に時間がかかり、本来受給できたはずの何ヶ月分もの年金が消えてしまうということも多いです。

その背景には、複雑な制度、カルテの法定保存期間と厳格に求められる初診日の証明の問題、医療機関の無理解や誤解、年金機構のずさんな認定事務などがあります。

障害年金の請求代理業務を行うには専門性が必要とされる

訴訟などで代理人の弁護士に成功報酬が生じるのは、世間一般にごくあたりまえのこととして認識されています。ちなみに弁護士の成功報酬は、年金の場合、遡及分にプラスして将来の年金7年分を経済的利益とし、その20%前後とされていることが多いようです。

もちろん、訴訟代理にかかる専門性や時間や労力を考えれば、障害年金の裁定請求代理で年金額の2ヵ月分を報酬とすることとの報酬格差があって当然です。

言いたいのは、年金額の何ヶ月分あるいは何%とする報酬制は、障害年金の請求代理を業務とする社労士に限ったことではないし、受給できる年金額を基本に報酬を決定することが「本人の年金を横取りする」ということになるならば、訴訟を代理する弁護士もまた、成功報酬など受け取るべきではないという理屈になるのではないか、ということです。

また、障害年金と同様、社労士が扱える業務のうち、たとえば脳疾患・心臓疾患・精神障害の労災認定や、個別労使紛争の代理を業務として報酬を得ることが非難されることは、おそらくあまりないと思います。

いうまでもなく、これらを代理するプロがいなければ、問題を抱える当事者は途方に暮れることになるでしょう。障害年金の請求についても、全部が全部ではないにしろ、同等の難しさと必要性があるケースが多いということです。

結局のところ、これら社労士報酬に対する批判の根本には、障害に対する特別視と、障害年金の請求の難しさ(適正な障害認定を得るための難しさ)が認識されていないことがあるのではないかと考えられます。

深い知識と専門性を身につけるために努力している社労士がたくさんいる

障害年金の請求を代理する社労士の役割は、ただ書類を書いて役所に提出することではありません。あくまでも本人を代理して、依頼者の障害の状態について適正な認定を得るための書類を準備し提出することです。

昨年は、社労士を対象とした3日間にわたる実務セミナーで、講師の1人として講義をさせていただきました。今年は不服申立て(審査請求・再審査請求)代理業務のセミナーでも講師をつとめさせていただいています。

これらセミナーには、北は北海道から南は九州まで全国各地からたくさんの社労士の方が参加して下さっています。セミナーの価格自体、決して安いものではありませんし、その上、旅費と多くの時間を使って受講して下さっているのです。

現在は、障害年金の実務を学ぶ社労士の研究会、勉強会もたくさんあります。障害年金の仕事にやりがいを見いだし、専門性を身につけるために、より知識を深めるために、時間とお金を投資して、努力している社労士がたくさんいるということを、どうかわかってほしいと思います。

私自身も、複数の勉強会で勉強しています。事務所には医学に関する本が、法律に関する本と同じくらいあります。利益ということだけを考えるなら、おそらく引き受けるべきではない依頼をよく引き受けます。1つの案件のために、複数の専門書を購入することだってめずらしくありません。

もしも本業が別にあって、無償で障害年金請求の援助をするとしたら、こんなことは到底できません。生活が持たないし、身体もボロボロになってしまいます。援助といっても、結局、責任の伴わない片手間のボランティアになってしまうことでしょう。

次回は、具体的にどのようなケースがあるのか、事例をあげながら書いてみます。

 

関連リンク

専門家検討会を一緒に傍聴した社労士の吉野千賀さんが、ご自身のブログで、第3回の検討会の内容を詳細にレポートされています。とても参考になります。

blog.goo.ne.jp

*1:ここでの「申請」という言葉は原文のままです。前回書いたとおり、正確には「請求」です。