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障害年金の請求を応援する社会保険労務士のブログ

障害年金の仕事が大好きな東京都町田市の社会保険労務士が、誤解だらけの障害年金のことを暑苦しく語ります。

知的障害で障害年金を請求する場合の初診日の取り扱い〜最近の相談事例から〜

障害年金(初診日)

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先日、あと数ヶ月で20歳になる、知的障害のあるお子さんの障害年金の初診日に関して、ご家族から相談の電話をいただきました。

シンプルな相談なのですが(したがって本来は回答もシンプルなはずなのですが)、社労士の相談会に出かけて混乱され、ネット相談でさらに混乱され、その内容を複数の社労士に相談すると回答が半々に分かれているということで、もう誰の言うことを信じたらいいのかわからないという状態のようです。

ブログ掲載の許可をいただきましたので、今日はその話題です。

*個人情報との関係で多少デフォルメしていますが、大筋は変えていません。

知的障害では出生日が初診日と扱われています。療育手帳があれば受診状況等証明書(初診日の証明)を取得する必要もありません。

Aさんは知的障害と広汎性発達障害を併発しており、早い段階で療育手帳(重度)を取得されています。幼児期に保健所でB医師(小児科医)による相談を受け、専門医の受診を勧められてC病院を受診し、上記の診断を受けられました。

この場合、初診日はB医師に相談した日でしょうか、それともC病院の最初の受診日でしょうか、というのがご相談の趣旨です。

Aさんはその後も断続的にC病院を受診しており、主治医の先生は障害年金の診断書についてもよく理解されていて、請求時期になったら診断書を書いて下さることになっているそうです。

ところが少し前に「市役所の障害年金相談会」に出かけたところ、相談に応じた社会保険労務士に、「健診のときが初診日になるため、B医師の受診状況等証明書(初診日の証明)が必要」と言われたため、保健所に問い合わせたが、作成できないと言われて途方に暮れているとのこと。

回答はもう見出しに書いてしまっていますが、初診日はB医師への相談日でも、C病院を初めて受診した日でもなく、Aさんの出生日です。また、療育手帳を取得されている場合、そもそも受診状況等証明書の提出は求められません。見出しに書いてしまえるくらいにシンプルなのです。

健診との関係

冒頭に書いたとおり、困ったAさんのご家族は、インターネットの相談サイトに投稿したそうです。

そこで親切な方の回答を得ますが、その回答は内容を要約すると、「平成27年9月28日に発出された初診日に関する厚労省の通知により、10月1日から健診に関する取り扱いが変わり、”健診日は初診日として取り扱わないこととする”とされたことから、初診日はC病院を初めて受診した日である。健診日が初診日だというのは、その社労士さんの勉強不足」というもので、「社労士さんの勉強不足」は残念なことにたしかにその通りなのですが、でもこちらの回答も、やはり間違っています。

(そのQ&Aを私も確認したのですが、記述がとても丁寧でしっかりしており、なんだかプロっぽい印象がある。無料相談サイトの回答とはいえ、信憑性が高く見えるのです。だからある意味、なおまずい。当事者の方が信じてしまいそうですからね)

この通知は「障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて」というもので、昨年10月1日から実施されており、健診日の取扱いについては、たしかに少し変わりました。該当部分を引用します。

初診日は、原則として初めて治療目的で医療機関を受診した日とし、健康診断を受けた日(健診日)は初診日として取り扱わないこととする。

ただし、初めて治療目的で医療機関を受診した日の医証が得られない場合であって、医学的見地からただちに治療が必要と認められる健診結果である場合については、請求者から健診日を初診日とするよう申立てがあれば、健診日を初診日とし、健診日を証明する資料(人間ドックの結果など)を求めた上で、初診日を認めることができることとする。

ただ、ここでは詳しく書きませんが、もともと、健診日が初診日と認定されるのは、限られたわずかなケースだけでしたし、発達障害の初診日の取扱いが、この通知が出たことによって変わったというわけではありません。

また、前述したように、知的障害の場合は出生日が初診日と扱われますので、わざわざこのような通知を持ち出すまでもありません。

発達障害が併存する場合

上記の回答者の方は、「知的障害のみの場合(発達障害を伴わない場合)は出生日が初診日とみなされるが、発達障害特有の症状を伴う場合は、発達障害としての請求となるため、相談のケースでの初診日はC病院である」とも書かれています。

いちいち突っ込んで申し訳ない気持ちではあるのですが、ここも当事者の方の誤解を招きかねない誤った記述となっているため、ちょっと整理して訂正しておきます。

知的障害と発達障害が併存しているケースは非常に多く、障害の程度について切り離して考えることは不可能ですから、1枚の診断書で総合的に認定されています。

ところで、これらを「同一疾患」と扱うのか、「別疾患」と扱うのかによって、初診日も異なってくるところ、この点について、厚労省は次のとおりとしています。

知的障害と発達障害は、いずれも20歳前に発症するものとされているので、知的障害と判断されたが障害年金の受給に至らない程度の者に後から発達障害が診断され障害等級に該当する場合は、原則「同一疾病」として扱う。

例えば、知的障害は3級程度であった者が社会生活に適応できず、発達障害の症状が顕著になった場合などは「同一疾病」とし、事後重症扱いとする。

なお、知的障害を伴わない者や3級不該当程度の知的障害がある者については、発達障害の症状により、はじめて診療を受けた日を初診とし、「別疾病」として扱う。*1

知的障害による障害の程度が単独で3級に該当するかしないかをどう判断するのかという曖昧な部分は残るものの、ざっくりまとめると、次のようになります。

  • 知的障害による障害の状態が1級か2級相当の場合=同一疾患(初診日は出生日)
  • 知的障害による障害の状態が単独で障害基礎年金を受給する*2ところまで重くはないが、3級には該当する程度の場合=同一疾患(初診日は出生日)
  • 知的障害による障害の状態が単独では3級にも満たない場合=別疾患(初診日は発達障害の症状により初めて診療を受けた日)

これまで請求を代理させていただいたたくさんのケースから考えても、発達障害の症状が顕著で、知的障害についてはボーダーといった場合は発達障害で初めて受診した日が初診日、療育手帳を取得する程度の知的障害がある場合には、出生日を初診日と考えて、まず間違いないはずです。

20歳到達日が障害認定日?

相談のなかで、「障害認定日は20歳の誕生日ですか?その前日ですか?」という質問もありましたので、回答しておきます。

20歳前に初診日がある場合、初診日から1年6か月経過後(「障害認定日」)が20歳到達日より前にあれば、20歳到達日が障害の程度をみる基準日、「障害認定日」が20歳到達日より後にあれば、その日が障害の程度をみる基準日です。

20歳到達日とは、年齢計算に関する法律により、20歳の誕生日の前日です。

したがって、Aさんの場合、20歳の誕生日前日が診査の基準日となり、その日の前後3か月以内の状態の診断書が必要ですので、時期が近づいたら、市役所の国民年金課で相談し、診断書の書式など、請求に必要な書類を受け取るかたちになります。

それにしても。

ネットの相談サイトの善意の回答者ならともかく、年金請求を業務として代理できる唯一の国家資格者である社会保険労務士が、誤った情報で相談者さんを無駄に混乱させてしまうことのないよう、じゅうぶんに気をつけたいものです。

*1:「知的障害や発達障害と他の精神疾患が併存している場合の取扱い」(平成23年7月13日付疑義照会回答より。

*2:知的障害では20歳前基礎年金となるため2級以上でなければ障害年金を受給できません。